so:but[and]=1.2.3.4 上映会 in シネマアミーゴ

逗子で唯一の映画館「シネマ・アミーゴ」。ミュージシャンや、モデルとして活躍する長島源さんが中心となって創り出すこの空間は、映画だけでなく生活を彩らせるための情報発信基地として、地域の人々に親しまれている。
上映作品の選択は「独断と偏見です」という長島さんだが、国内外問わずカルチャームービーや劇映画、ドキュメンタリー作品まで、質の良い作品ばかりが並ぶ。

「so:but[and]=1.2.3.4.-あらかじめ,情動の.」の上映にあたり長島さんに話を聞いた−−

so:but[and]=1234 シネマアミーゴ

−−本作をご覧になられていかがでしたか?

この作品をきっかけに彼らのことを知ったんですが、しょうぶ学園の彼らの音楽は、フリーセッションの感覚ですよね。その瞬間から生まれる一体感の音はジャズだなと思いました。10代の頃、「ギャーテーズ」という知的障害を持つお坊さんを中心に、頭脳警察の石塚俊明や元・裸のラリーズの高橋ヨーカイ、フリーキーマシーンの松本ケンゴらミュージシャンが参加するバンドの映像を見て衝撃を受けたんですが、そのときの感覚を思い出しました。

−−この場所の理想のカタチとは

しっかりと顔を見ることができる環境で、偽物でないものをしっかりと提供できて、それぞれが普通の生活がしっかりとできる環境ができればな、と思っています。

−−長島さんにとって「本物だな」と感じるものとは

生み出す人間が首尾一貫していて、ブレていないものかな。

−−音楽を作る側、モデルとして撮られる側、映画を提供する側、それぞれの魅力とは

音楽は肉体的な世界。モデルは職人。相手から求められているものにどれだけ応えられるかっていうものだからね。一方で映画上映やイベントは、よりお客さんに向くし、人と繋がれるところが魅力です。

元々「ベース」という情報発信基地を、長島さんとカメラマンとデザイナー3人で立ち上げ、その姿がまるで映画の「スリーアミーゴス」の3バカトリオのようだった、という由来から、「シネマ・アミーゴ」という名前になった、というこの映画館も今年で6年目。
「続けていくことで受け入れられていくことを、実感し始めた」という長島さん。今後の目標は、「今やっていることをより精度をあげ、具現化していく」ことだそうだ。
逗子で唯一の映画館。
決して大迫力の空間ではないけれど、今後もじわりじわりと、人々の生活に彩りを与えていくだろう。

そして監督、柵木志へも改めて聞いてみた。

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--映画「so:but[and]=1.2.3.4.-あらかじめ,情動の.」について簡単に教えてください。

この作品は、鹿児島にある障がい者支援施設「しょうぶ学園」の音楽パフォーマンス集団、「otto&orabu」を追っています。otto&orabuとは、しょうぶ学園の園生と職員たちによるユニットで、園生の演奏するパーカッションottorと、職員の方たちによるヴォイスグループorabu、そして指揮は施設長の福森伸さんで結成された音パフォーマンスグループです。
2013年6月に名古屋で彼らのライブイベントが開催されたのですが、そのドキュメントと、学園での職員や園生へのインタビューを軸に「考えないわけにはいかない何か」を描いています。ドキュメンタリー映画の中でも、自分では「『アート・ドキュメンタリー映画』なのかなぁ」と考えながら作っていますが、どう感じるかは、受け手の皆さんにお任せしても良いのかもしれません

--今回撮影をされようと思ったきっかけとは

もともとは、先ほど言った“名古屋でのライブイベントを撮影、記録する”ということが目的でした。でも、追っているうちに「記録するだけではもったいない」と感じるようになり、「ドキュメンタリー映画」という選択肢が浮上してきました。
正直なところ、これまでは障がいを持った方たちに対して「可哀相」という感情を持ってしまっていたのですが、皆さんと接し、福森さんのお話を伺っているうちに、そう考えていた自分が恥ずかしくなりました。それから、毎回素敵な驚きで満たされていきました。自分自身の中にある価値観みたいなものが揺らぎまくりましたね!
これを映像にして伝えることができたら、「考えないわけにはいかない、何か」をより多くの方たちに感じてもらうことができるのではないかと思いました。

--撮影をされてみて、いかがでしたか?

撮影すればするほど、施設長の福森さんの志に魅了され、園生の皆さんも本当に生き生きされているんだなと思いました。印象が変わったというより、自分の考えていたことが具象化され、確信に変わってきた感じです。

--福森さんのどのような志に惹かれましたか?

福森さんの志は、苦悩から生まれた気づきなのかな、とも思うんです。そこから生まれる信念は園生達への優しさに溢れていて、ある意味で学園に対して憧れすら抱いてしまうくらいなんです。

--カメラを向けたときと、カメラを向けないときで、学園の方たちに変化はありましたか?

微妙な変化はあったのかもしれませんが、基本的には、いつも側に福森さんにいていただいたので、園生の皆さんはいつも通りリラックスされていたのではないかと思います。
なるべく「いつもの」しょうぶ学園を撮影したいと心がけました。

――福森さんに対する園生たちの行動で印象的な場面はありますか?

福森さんと園生たちとの関係性は実に清々しいんです。曇りがない。毎日同じギャグを飽きずに繰り返す園生がいるんですが、福森さんはいつも楽しそうに聞いています。「いつも同じこと言うんですよ」と言いながらニコニコしている。ついには聞いている僕らも楽しくなってくる。飽きるどころか、もっと聞きたくなってくるという(笑)不思議な魅力ですよね!

--出来上がった作品をご覧になられていかがでしたか?

現時点でベストを尽くしたつもりですので、満足しています。

--柵木さんから見た「しょうぶ学園」とは?

時間をかけてじっくり訪れたい場所です。
プロデューサーのイワタが「福森さんは楽園を創っている」と言っていましたが、まさにその通りだと思いました。とても簡単に語り尽くせる場所ではありません。
少し大仰に聞こえるかもしれませんが、この映画を見て、これまで抱いていた世界観にバイアスを加えることができたら嬉しいです。

「so : but [and] = 1.2.3.4 − あらかじめ, 情動の. 」in CINEMA AMIGO

場所:シネマアミーゴ http://cinema-amigo.com
日時:2015年4月5日
am 10:00・pm 3:00・pm 5:30
金額:1500円
対談:長島源 ×監督柵木志

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